レポート | 投稿日: 2018.05.22

3月13~14日、宮城県内で「海岸防災林再生ワークショップ2018」を開催しました

国民参加の海岸防災林再生へ向けた取組は、平成25年春から国有林において逐次公募方式による植栽等再生活動が開始され、その後、宮城県や福島県等においても公募等による海岸防災林再生活動が広がっています。

公募開始から5年が経過し、植栽から保育へと段階が移行している箇所が増える中で、保育・生育に関する技術的な課題の他に、活動への参加者の確保等といった課題を抱えながらの活動を続けている団体や企業が多いのが現状です。

このような中で、活動団体や企業、行政が一堂に会し、現地で植栽後の苗木の状況を確認した上で、保全の方法や残存緑地への対応といった問題事項を検証し、こうした諸問題への対応方法や海岸防災林の未来像、海岸林活動に参加してもらうための手法等について専門家を交えて議論し、今後の取組みに役立てていくことを目的に、平成30年3月13~14日の2日間、宮城県内において「海岸防災林再生ワークショップ2018」を開催しました。

 

1日目 現地見学会

3月13日(火)は現地見学を実施しました。12時に仙台駅に集合し、バスで海岸防災林植樹地に向けて出発しました。

最初に東松島市大曲地区植樹地(国有林、県有林)を見学しました。国有林の植栽エリアは「社会貢献の森」として 平成26年から公募等による植栽が実施されています。当日の植栽地は、3月8~9日の2日間にかけて降った雨が排水されず、冠水している箇所が何ヶ所かありました。

東松島市大曲地区植樹地(国有林)の見学。宮城北部森林管理署 高鷲森林技術指導官からの説明を受ける参加者

東松島市大曲地区植樹地(国有林)の見学。宮城北部森林管理署 高鷲森林技術指導官からの説明を受ける参加者

冠水箇所が見られた

冠水箇所が見られた

この植栽地には、クロマツのほかにツバキ、シラカシ、コナラなど広葉樹も植栽されています。1年前に訪れたときは枯損しているものが散見されましたが、今回はさらに枯死したものが多く見られました。広葉樹は肥料分を多く要求します。山砂でかさ上げされ、栄養分のない基盤へ植栽された広葉樹は、貧栄養に加え、冬季の強風による蒸散の影響も受けて枯れていったものと推定されます。クロマツについては、成長の良いところは排水がよく、成長の悪いところは排水が悪く冠水していました。このことから、植栽基盤の排水の良否が成長に大きく影響していることが確認できました。

防潮堤に並行して南北に延びる県有林の植栽エリアは、平成27年から植栽が進んでいます。クロマツを中心に植栽されていますが、一部アカマツの植栽地もあります。

東松島市大曲地区植樹地(民有地)の見学。遠くに津波の被害を免れた残存緑地が見えます

東松島市大曲地区植樹地(県有地)の見学。遠くに津波の被害を免れた残存緑地が見えます

 

次に、仙台市若林区の谷地中林国有林に移動しました。ここは公募による再生プロジェクトがスタートした場所で、広葉樹を含め多様な植栽方法が採用されています。クロマツがほとんどの植栽地の中で、ひときわ大きく育った広葉樹が目に飛び込んできました。5m以上に育ったヤマハンノキです。

植樹地で一際大きく成長したヤマハンノキ

植樹地で一際大きく成長したヤマハンノキ

植栽地の奥に向かっていくと、常緑広葉樹の植栽エリアがあります。更に奥に向かうと、コナラやヤマザクラなどの落葉広葉樹の植栽エリアがあります。大きく育ったクロマツの植栽エリアでは枝打ちを行ったところもありました。スス病など病害虫の被害が散見されるエリアもありました。樹種や苗の大きさ、植栽方法も多様なエリアで、うまく育っているものや苦戦しているもの、様々な事例を見学できました。東松島市と仙台市若林区の海岸防災林植樹地の視察会で学んだことを、今後のより良い森づくりに繋げていただきたいと思います。

大きく成長した抵抗性クロマツをバックに説明をする仙台森林管理署の市川企画官

大きく成長した抵抗性クロマツをバックに説明をする仙台森林管理署の市川企画官

仙台市若林区の谷地中林国有林の見学

仙台市若林区の谷地中林国有林の見学

 

2日目 技術的講話と報告、分科会

3月14日(水)は会場を仙台市内に移しました。まず、主催者を代表して国土緑化推進機構 梶谷専務理事から、「震災から7年が経過し、集中復興期間から復興造成期間に移行したということで、防潮や飛砂防止等の機能を有する海岸防災林再生復興事業も、国・県等によって植栽基盤整備が終盤を迎えている」とした上で、「植栽と併せて民間による植栽木の保育がますます重要になっている。海岸林再生には長い期間がかかるが、こうした期間に民間による海岸林再生活動を効果的に実施していくためには、都市部のNPO・企業と東北地域のNPO、被災地住民、行政機関が協働連携の取組みを進めて、ニセアカシア駆除等の技術的課題、活動組織の維持管理、支援先の確保、被災地住民の参加促進等の諸課題に取組むことが重要である」と開会の挨拶をしました。

2日目の会場の様子

2日目の会場の様子

開会の挨拶をする国土緑化推進機構 梶谷専務理事

開会の挨拶をする国土緑化推進機構 梶谷専務理事

 

技術的講話・報告

岩手県立大学総合政策部 島田直明 准教授より、「これからの海岸林再生活動に向けた課題と提案~多様な人たちの思いをつないで魅力ある海岸林へ~」というテーマでお話をいただきました。

島田先生には前日の現地見学会も踏まえたお話をしていただきました

島田先生には前日の現地見学会も踏まえたお話をしていただきました

講話の中では、島田先生も携わっている岩手県釜石市根浜海岸の再生活動を事例に挙げながら、
①海岸林の管理の今後
②海岸林の管理体制の今後
③海岸林を含んだ地域のランドスケープの今後
という3つの今後について考えていくことが重要とした上で、「多様な人たちが管理に携わることが大切である。支援はこれからもまだまだ必要なので、地元をいかに巻き込むかという仕組みや仕掛けづくりが今後大切になってくる。楽しいと思ってくれることを活動に組み込むことで、息長く続けることができる」と仰っていました。

 

次に、国土緑化推進機構 荒井基金管理部長より「これまでの取組を振り返りつつ皆様へのお願い」というテーマで報告をしました。
当機構はこれまで海岸林再生の技術的な課題に関する検討会の実施や、東京で企業に支援の要請、子どもを含めた若い人たちに関心を持ってもらうために冊子やDVDなど作成し、様々なイベントでそれらを使った普及啓発を行ってきました。そのような活動を続けた中で、震災からの時間の経過とともに、企業は復興支援への腰が重くなってきていることや、管理・保育の認識の弱さ、NPO団体の高齢化と息切れ等の課題も見えてきており、これからも海岸林再生活動を維持していくためには、NPOが核となって、行政機関や国土緑化推進機構がそこに支援するという形の関係者間の協力が必要であり、その体制の構築について、参加者皆さんにお願いをしました。

講演資料:これまでの取組を振り返りつつ皆様へのお願い
(国土緑化推進機構 荒井基金管理部長)

 

続いて、宮城県農林水産部 森林整備課 保安林班技術補佐の佐藤夕子氏より、平成30年度より始まる「みやぎ防災林パートナーシップ事業」についての説明をいただきました。

新事業について説明をする宮城県農林水産部森林整備課の佐藤補佐

新事業について説明をする宮城県農林水産部森林整備課の佐藤補佐

この事業は、これまで海岸林の植樹した場所を、震災前まで管理してきた地元住民がいない中で、どのように管理していくかという課題が生まれたことをきっかけとして発足した事業です。
海岸防災林の現状や活動事例、各行政機関の連携などについて、意見や情報交換を行い、「みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動」において協定締結をした団体や県、市町を構成員として、団体が長く活動できるような方向性を検討していくという事業内容の説明がなされました。
この事業を通して、企業団体や県民の海岸防災林への関心が高まり、海岸防災林を活用した新たな取組みが展開されていくことや、将来の海岸防災林管理の担い手の輪を広げることが期待されています。

最後に、NPO法人宮城県森林インストラクター協会より「ニセアカシアバスターズ報告と活用事例について」というテーマで報告をしていただきました。
森林インストラクター協会では、かんぽ生命の助成を受けて「ニセアカシアバスターズ」を組織し、植樹地に周囲から侵入してくるニセアカシアの駆除を行ってきました。切ったニセアカシアは乾燥させ、ネイチャークラフトの材料として活用することができるとのことで、この日は参加者にニセアカシアの輪切りを配布したり、受付にはニセアカシアを使って製作されたクラフト作品も展示され、保育整備時に伐採されたニセアカシアを有効に活用するための活用例を紹介してもらいました。

ニセアカシアでつくった犬を例に、活用方法の一部を説明してもらいました

ニセアカシアでつくった「犬」を例に、活用方法の一部を説明してもらいました

 

分科会

以下の4つのテーマに分かれて意見交換が行われました。
①これからの海岸防災林保全の手法について
②残存緑地の管理について
③未来の海岸防災林との関わりについて
④楽しい海岸林活動の手法について

テーマ③の「未来の海岸防災林との関わりについて」では、海岸防災林を単なる防災林としてだけではなく、様々な恩恵を与えてくれる多目的フィールドとして活用していくための方法や、活動により多くの方が参加してもらうための魅力的な活動内容についての議論をしました。
海岸防災林に緑地公園としての機能を付加することで、利用者を増やし維持管理への関心を高めるといった活用方法の意見や、津波だけではなく飛砂や塩害から海岸防災林内陸部にある生活圏の環境を守るという海岸防災林の機能そのものに目を向けた意見も出ていました。

分科会の様子。参加者の活発な意見交流で大いに盛り上がりました

分科会の様子。参加者の活発な意見交流で大いに盛り上がりました

 

分科会の振り返り

分科会終了後に、分科会のコメンテーター4名が登壇し、宮城県森林インストラクター協会の木村健太郎氏が司会となり、分科会で話し合われた内容や意見を発表してもらいました。

ws13

いくつか紹介しますと、
①侵入してくる植物の種類や量が植樹地によってまちまちで整備が楽な場所もあれば、非常に苦労している場所もある。かけられる労力なども考慮しながら、出来る範囲で続けていくことが必要。
②海岸防災林の様々な活用方法は検討したが、保安林には多くの制約や制度があり、実現が難しい。
③海岸防災林がなくなることで飛砂や潮風による実害を地元の人たちは受けている。何をもって「防災」なのか。なぜ必要なのかを理解してもらわないと海岸防災林再生の普及啓発活動は広がっていかないのではないか。
④津波の被害を免れた残存緑地内でマツ枯れが進行しており、植樹地に影響が出る可能性があるので早急に対処していく必要がある。
⑤海岸防災林で活動する際に雨天時に逃げ込める建物や、震災について学べる施設といった周辺環境を整備することで、海岸防災林への理解や震災被害の伝承がより広く伝えることができるのではないか。

といった意見が出されました。
この他にも、講師やコメンテーターの方々、最後まで参加していただいた宮城県の方々に参加者からの質疑にも回答していただき、宮城県が持つ今後の展望ついて説明や、保育管理に関する技術的な指導をいただき、分科会報告は終わりました。

 

閉会式

閉会式では公益社団法人宮城県緑化推進委員会 田畑正紀 事務局長より感想を発表していただきました。

この中で田畑氏は、「今、我々は壮大な実証フィールドにいる。伊達開藩400年をかけて作り上げたのがあの立派な海岸防災林である。我々はそのほんのわずかな部分しか経験をしていない。試行錯誤をし、知恵を出し合いながら長い目で見て、それを次世代へつないでいくということを実感した。」とこれからの海岸防災林再生活動への熱意をとても感じるお話をいただきました。

海岸防災林再生活動への強い思いを参加者に伝える宮城県緑化推進委員会 田畑事務局長

海岸防災林再生活動への強い思いを参加者に伝える宮城県緑化推進委員会 田畑事務局長

最後になりますが、今回のワークショップは昨年同様に東北森林管理局や関東森林管理局、宮城県、公益社団法人岩手県緑化推進委員会、公益社団法人宮城県緑化推進委員会、公益社団法人福島県森林・林業・緑化協会の後援をいただきました。初日の現地視察会での解説や、2日目の分科会にも参加していただき、行政の立場から海岸防災林再生への考えや現状についてお話をいただきました。また、運営面では宮城県森林インストラクター協会から今年も多大なる協力を得ながら実施することができました。

国の海岸防災林再生等復興支援事業は平成28年度で終了しましたが、海岸防災林再生の活動の輪を広げていくため、微力でありますが国土緑化推進機構として取組みを検討していく所存です。