第14回

坂下洋子さん(岩手県盛岡市)/NPO法人環境パートナーシップいわて理事

地域・人と人をつなぐ海岸再生林-岩手県釜石市

岩手県釜石市の地図

海岸林が繋ぐ地域の絆

震災から6年目を迎えようとしています。自分も含め、あの震災でたくさんのものを失いながらも、人との繋がりの中で生きるモチベーションを受け取りつつ、今を生きている人がほとんどなのだと思います。人と人とが繋がることで見えてくるものは数多く存在します。

今、釜石の鵜住居根浜地域で一つのプロジェクトが動き出しています。この地域に以前から受け継がれてきた、ある時は厳しくある時は優しい自然の営みに、寄り添いながら培ってきた、地域の結束があります。この地域環境の中で当たり前に時を重ねてきたこの営みが、実は尊いものであったということを、震災が気づかせてくれたのだと思います。

震災で失われた海岸防災林を地域の人の手で復活させようという思いが一つになって「海岸林再生実行委員会」が2017年1月に立ち上がりました。この立ち上げの間にも打合せを重ねて体制の整備などへの想いを強めて、海岸を復興するそれぞれの思いを伝えあいながら海岸防災林再生への一歩を踏み出してすことができたと思います。

震災前は、自然に寄り添って生きるというベクトルは同じであっても、それぞれに活動していた人たちやグループが、震災後は海岸防災林を再生しようという目標に向かって繋がり、動き出しています。

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心地良さと地域の老若男女・子ども達の参加をモットーに

この会の呼びかけ人である、認定NPO法人環境パートナーシップいわての代表理事である野澤日出夫氏は「私たちNPOでは“心地よく豊かに生き延びるために”をスローガンにして活動しています。“心地よさ”は、今までの生活環境を維持するデーターや基準という評価ではなく、新たな評価基準である“心地よさ”は、五感で感じるもの、生き物が生来もつリスクセンサーなのです。どんな小さなものでも危険を感じれば逃げ去ります。しかし五感が鈍いか、感じても移動手段を持たない生き物はやがて減少、消滅していきます。ですから大気汚染が基準値以下だから…などというのではなく、人が生きていく上で住みやすい環境 “心地よい環境”が求められてきます。多様な生き物が住める環境…それは人にとっても心地よい環境に他なりません。幸い岩手の海岸林の多くは、森が間近に迫っていて、林縁の多様な植生は海を含めて多様な生き物を育み、森から海まで恵まれた地域を作る事が容易な条件が整っています。」と話した上で「この根浜においても、地域性を生かした特色ある海岸防災林と林縁作りに多くの皆様のお力を結集し知恵を出し合って、老若男女幼児まで含めた将来につながる活動にして生きたい。」と海岸再生林を主体とする地域再生の道筋を語り、実行委員会がスタートしました。

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被災後も残った貴重な根浜の海岸植物

その委員会メンバーのひとり岩手県立大学 総合政策学部の准教授 島田直明氏は、根浜海岸の海岸林の学術的価値を次のように話されています。「岩手県の多くの海岸林が津波により失われましたが、根浜海岸では震災前から変わらず海岸林の一部が維持され、同じ景観が存続しているという点で、希少な景観と言えます。また、海岸林の下に海浜植物が生育し、その側面の海岸林が失われたところでは、海岸林から海浜植物群落の連続的な景観が認められます。このような植生の連続性および海岸林の下に海浜植物がいるという状態は、震災前では高田松原などで確認できましたが、現在の岩手県では根浜海岸のみで見られる大変貴重なものになっています。また岩手県の海岸の典型的な形状を残すものとして、学術的にも地域の自然景観としても重要なものです。」

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