NPOレポート | 投稿日: 2017.02.24

NPO活動レポート 第6回 仙台市森林アドバイザーの会

「仙台市森林アドバイザーの会」は、仙台市を中心に活動している団体で、仙台市が主催している「仙台市森林アドバイザー養成講座」を終了した1期生と2期生が中心となって平成16年8月に設立されました。平成28年11月現在、会員は91名です。

養成講座は、市民が行う森林ボランティア活動の指導的役割を担う人材を養成するための体験型養成講座で、刈払機やチェーンソーによる下刈り・除伐・間伐等の森林作業、専門家の講義や林業先進地等の視察を実施し、森林・林業の現状や課題について、年間11回のプログラムで学びます。チェーンソーと刈払機については、林業・木材製造業労働災害防止協会主催の安全衛生教育を受講することがプログラムで義務付けられています。平成28年度は14期生が受講中です。

仙台市森林アドバイザーの会の設立目的は、

  1. 健全な森づくり活動と、森林ボランティアの指導・育成を実施する。
  2. 荒廃森林の整備により、森林の公益的機能の回復を図り、地球環境保全に寄与する。

ことです。

副代表の及川信彦さんに、会の活動内容をお聞きしたところ、活動が多様で、年間活動日が120日もあるので、今回のインタビューで活動の全体を紹介することは難しいと思いました。会員にはチェーンソーと刈払機の熟練者が多いとのことでしたので、その力が発揮される森林整備と震災復興・海岸林再生活動に絞って、会の活動紹介をすることにしました。

仙台市森林アドバイザーの会 及川信彦さん 仙台市荒浜海岸林植栽地「もりっとの丘」の説明の様子

仙台市森林アドバイザーの会 及川信彦さん
仙台市荒浜海岸林植栽地「もりっとの丘」での説明の様子

 

現在力を入れて活動していることは、次の4つです。

  1. 仙台市みんなの森づくり事業の一部業務受託(市民ボランティアの指導・育成)
  2. 泉ヶ岳整備事業(利活用推進市民会議での政策提言)
  3. 森林整備事業(旗立はたたて三丁目緑地、青木市有林)
  4. 海岸林再生(仙台市若林区荒浜国有林)

会の活動は上記以外に、小学校の授業サポート、自然観察会のサポート、他団体との協働での活動、仙台市の公園管理や植樹祭の指導等もあり、活動は多岐にわたります。会は、仙台市より「緑の活動団体」に認定されています。認定団体は24団体で、毎年交流会が行われ、この中で、森林整備の実績をかわれ、他団体からの支援要請があり、活動の範囲が年々広がっています。

 

森林整備活動

(1)旗立三丁目緑地(市有地)

旗立三丁目緑地の地図

旗立三丁目緑地植生調査(平成28年7月)

旗立三丁目緑地植生調査(平成28年7月)

旗立三丁目緑地は、太白山たいはくさんの麓にあり、昭和44年にスギが植林されたまま、40年間放置された荒廃林でした。最初にこのスギ林を訪れた元代表の鹿郷さんは、あまりの荒廃ぶりに言葉を失ったそうです。会を設立した頃は、活動拠点となるフィールド持っていなかったので、仙台市から許可を取り、日頃の成果を活かす拠点として、平成21年からこの緑地の整備を開始しました。整備方針は、①木材生産林から環境林へ、②スギ人工林から混交林へ、③同齢林から異齢林へ、④単相林から複層林へとし、緑地を4エリアに分け、それぞれのエリア毎に目標林型と整備方法を決めました。整備は、暗い森を明るくするため、間伐から始めました。平成23年には、TBSテレビの取材を受け、伐倒や刈払いの様子が撮影されました。整備当初は年間6回程度活動していましたが、整備が進むにしたがって、光が差込む明るい森になってきたので、現在は年間2~3回の整備活動になっています。また、植生調査を毎年1回行っており、整備当初から比べると、森の中の植生が非常に豊かになりました。整備される前は立入る人が殆どいなかったそうですが、遊歩道も整備した今では、市民の憩いの場所になっています。この森は、新入会員のチェーンソー研修や子供達の自然観察会にも活用されています。

旗立三丁目緑地自然観察会(平成28年11月)

旗立三丁目緑地自然観察会(平成28年11月)

 

(2)青木市有林

仙台市太白区秋保町湯元青木の地図

青木市有林は、仙台市秋保あきうにあり、数十年前に市民植樹祭でサクラが植えられましたが、管理が行き届いていませんでした。この市有林は、森林アドバイザー養成講座修了生の記念植樹の場所としても活用され、1期生から10期生が毎年ヤマザクラを50本、合計500本を植樹しました。しかし、市の管理だったので自分達で管理はしていませんでした。及川さん達9期生は、草に埋もれたままのサクラを何とかしなければならないとの思いから、市の許可を取り、平成23年からサクラの苗木を救出する活動に着手しました。活動場所は、サクラの植樹時期別に5つのエリアに分け、救出作業を始めました。

青木 市有林サクラの救出(平成25年8月)

青木 市有林サクラの救出(平成25年8月)

苗木は、ススキやクズに埋もれており、救出は大変な作業でした。市民植樹祭の場所は、サクラが一本も残っておらず、何のための植樹だったのかと虚しい気持ちになりました。全てのエリアの苗木を救出するのに2年間かかりました。その後は毎年下刈りをしています。平成28年には、エリア全体の苗木に肥料を施しました。下刈りをしたことが原因なのか否か分かりませんが、平成28年は第5区で相当数の食害がありました。犯人はニホンジカ?、カモシカ?、ノウサギ?・・・?。対策のため、ウッドガードを取り付けました。会では、この場所がサクラの名所になることを願って、これからも管理を続けていくそうです。

青木 市有林サクラの救出後(平成26年4月)

青木 市有林サクラの救出後(平成26年4月)

 

被災地支援・海岸林再生

(1)菖蒲田浜松林再生プロジェクト

宮城県の海岸林は、仙台藩祖伊達正宗公の命により整備され、最初の植樹地は現在の七ヶ浜町と仙台市蒲生と言われています。七ヶ浜町の海岸林は、東日本大震災の津波により、民有林と国有林合わせて11haが被害に遭いました。平成23年6月から、被害に遭った七ヶ浜町菖蒲田浜地区のマツの片付けを仙台市森林アドバイザーの会の会員が個人で行っていましたが、七ヶ浜町震災ボランティアセンターから、会として支援してくれないかとの依頼がありました。会では、復興支援の一環として「菖蒲田浜松林再生プロジェクト」を立上げ、8月から整備作業に取組むことになりました。作業は、菖蒲田浜海岸の津波で被災したマツを片付けるため、大型重機を入れることになり、その重機が作業できる場所を確保することでした。防潮堤に沿って、幅30m、長さ400mの区域が作業エリアになりましたが、被災したマツは、横倒しのもの、根が上を向いているもの、斜めになっているもの、マツ同士が絡み合って倒れているもの、津波で流されてきた漁網、家庭ごみ、ガレキが絡まっているもの等で、作業は悪戦苦闘の連続でした。作業は、8月20日に第1回目を行い、毎回20名前後が参加してチェーンソーを使い、伐倒や玉切りを行い、9月8日の7回目で「菖蒲田浜松林再生プロジェクト」は終了しましたが、更に「菖蒲田浜復興まつり」の会場整備を依頼されたので、9月9日にチェーンソーや刈払機を使って整備作業を行い、これで七ヶ浜町の復興支援活動は全て終了となりました。七ヶ浜の復興作業は、会の力が発揮できる場として取組んできましたが、企画の段階ではここまでできるとは想定していませんでした。菖蒲田浜の海岸林再生と菖蒲田浜の皆さんに元気を取り戻して欲しいとの思いが、この結果に繋がったと思っていますとのことです。

 

(2)貞山運河サクラ植樹

宮城県には、阿武隈川から松島湾を経て旧北上川まで、約49kmにわたる日本一の運河群(貞山運河、東名運河、北上運河)があります。運河は、舟運を目的として仙台藩祖伊達正宗公の命で建設が始まり、後に明治政府により計画された野蒜築港事業に関連して延伸されたものですが、近年では河川としての役割を担っています。運河の護岸や周辺にはマツが植えられていました。また、運河から海岸までの間には広大な松林がありましたが、東日本大震災の津波により、護岸のマツと海岸林は倒伏、幹折れ、流出等の甚大な被害に遭いました。県では運河の復旧工事を進めており、復旧後の運河群にサクラを植樹し、美しい景観を創出することによって、運河の歴史に華(花)を添える事にしました。平成25年度から貞山運河で植樹が始まり、会では平成26年度の植樹(ヤマザクラ、オオシマザクラ)に参加しました。

 

(3)「みどりのきずな」再生プロジェクト

七ヶ浜町での復興支援が終わった後、津波で被災した海岸林の廃材等の処理だけでなく、自分達で海岸林を再生しようという機運が高まり、会として海岸林再生に取組むこととし、東北森林管理局が仙台市若林区荒浜の国有林で募集している「みどりのきずな再生プロジェクト」に応募しました。このプロジェクトは、海岸防災林再生のため、盛土した生育基盤を造成し、工事が完了した一部で、民間団体と国が協定を締結して、一定期間、植栽から保育までを行う活動です。会は、平成25年3月に仙台森林管理署と協定を締結しました。会の協定面積は約0.1haで、植樹地は「もりっとの丘」と命名し、及川さんが責任者になって活動することになりました。平成25年5月11日に準備作業を行い、翌5月12日に会員28名が参加して、抵抗性クロマツ(3年生苗)460本、コナラ30本、ヤマザクラ30本を植樹しました。

「もりっとの丘」植樹(平成25年5月)

「もりっとの丘」植樹(平成25年5月)

「もりっとの丘」植樹参加者(平成25年5月)

「もりっとの丘」植樹参加者(平成25年5月)

植樹後は、年2~3回の管理作業(除草、支柱への誘因確認等)と生育調査を行っています。クロマツは一部生育が悪い場所はあるものの、100%活着しています。コナラとヤマザクラは活着が悪く、植樹した年の夏にはコナラは4~5本、ヤマザクラは半数以上が枯れてしまいました。荒浜国有林では、仙台市森林アドバイザーの会を含め14団体が植樹をしており、平成26年~28年の3年間、国土緑化推進機構等が主催した「海岸林再生ワークショップ」の視察会場になりました。会では3年間ともワークショップに参加し、平成28年の視察時には、及川さんが現地で活動内容を報告し、その中で「平成27年秋には、キノコの発生が見られたので、これで一安心、クロマツは順調に生育しますよ」と話されました。2日目のワークショップでは、会の代表の角田尚一さんがパネラーとして荒浜での活動をお話しされ、クロマツは順調に生育しているが、ヤマザクラの活着が非常に悪いと報告されました。また、平成28年7月に行われた日本緑化工学会が主催したシンポジウム「海岸林再生の取り組みとこれから」で、及川さんが荒浜国有林での活動を報告しました。
及川さんは、「ヤマザクラを潮風の当たる海岸でクロマツと同時に植樹して育てるのは難しい。クロマツが防風の役割を果たすぐらいに生長してからヤマザクラを植えるのなら、育つと思う」と話しています。荒浜国有林の協定は平成28年3月までの契約でしたが、14団体全てが契約を更新し、会では平成33年3月までの5年間、契約を更新して育樹に努めることにしました。

「もりっとの丘」生育状況(平成28年5月)

「もりっとの丘」生育状況(平成28年5月)

 

(4)「海岸防災林再生・きずな植樹」

宮城県では、東日本大震災により甚大な被害を受けた海岸防災林の再生を図るため、約500万本以上の苗木が必要とされていますが、県内の苗木生産者だけでは賄う事ができず、県内外から多くの支援の手が差し伸べられています。その支援の一つとして、平成25年度に第64回全国植樹祭が開催された鳥取県からは、「とうほくとっとり・森の里親プロジェクト」として、宮城県が提供した種子から小学生等が大切に育てた里帰り苗木の贈呈を受けています。また、平成27年度に第66回全国植樹祭が開催された石川県からは、復興支援として「クロマツ」の苗木の贈呈を受けています。県では、被災した海岸防災林の早期再生を図るため、贈呈された苗木を「きずな苗木」として、県内のボランティア団体等との協働で、亘理町の町有林に植樹することにしました。会では、海岸林再生の取組みの一環として、植樹に参加しました。植樹は平成27年11月21日、苗木は、鳥取県からの里帰り苗木(コナラ、クリ、ケヤキ)1000本、石川県からの「抵抗性クロマツ(コンテナ苗)」1000本です。参加者は、鳥取県・石川県・宮城県関係者、亘理町関係者、宮城県緑化推進委員会、ボランティア団体は仙台市森林アドバイザーの会を含め8団体の合計約100名です。

 

(5)他団体への参加

「名取市海岸林再生の会」と「(公財)オイスカ」が、名取市で「海岸林再生プロジェクト」を立上げ、約100haの海岸林再生に取組んでいます。会では、海岸林再生の取組みの一つとして、このプロジェクトに参加することにしました。プロジェクトの植樹は平成24年より始まり、会では平成24年と25年に参加し、植樹や一般募集されたボランティアの植樹指導等を行いました。

及川さんは、多くの団体が会員の高齢化に直面している中で、「仙台市森林アドバイザーの会は、毎年森林アドバイザー養成講座修了生が会員になるので、会員数や高齢化の心配はありません。活動は年々充実しています。」とおっしゃっていました。仙台市森林アドバイザーの会が、仙台市の「緑の活動団体」の中心的な役割を担い、森林整備や海岸林再生に益々活躍されることを期待しています。

 

及川信彦さん
1949年生まれ。仙台市森林アドバイザーの会 副代表。仙台市在住。