第13回

野澤日出夫さん(岩手県盛岡市)/認定NPO法人環境パートナーシップいわて代表理事、NPO法人日本ビオトープ協会副会長(主席ビオトープアドバイザー)

今回は、海岸林サポート委員である環境パートナーシップいわて野澤代表が、岩手の海岸部を巡って、最近の状況について報告をしてもらいました。

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地震により土壌のかく乱が行われたが、これが思わぬ贈り物を私たちに提供してくれた。それは、昔、地中に埋没され静かに休眠していた種子が、再び土壌のかく乱で下界に姿を現し復活してきたのである。以下、この震災レガシーともいえる話を進める。

大槌町市街地の湧水と自然再生

農薬耐性の無い貴重なミズアオイ群が、数十年以上前に湿地・田んぼから中心市街地となった箇所において、この度の津波によって掘り返され、この埋没した種子が湧水の中に出現した。いわば3・11大震災のレガシーともいえ、この貴重な植物群の保護活動を地域の方々と行ってきた。

このたび保護保全のための調査(ドローン空撮・大槌町)を行った。ミズアオイ(Monochoria korsakowii)(ミズアオイ科一年草)環境省レッドデータブック「準絶滅危惧種」・いわてレッドデータブック「Aランク(絶滅の危機に瀕している)」に分類され、東日本大震災後宮城県を中心にその動態について、日本ビオトープ協会が中心になって調査を行っている。今後も持続的に保全できる方法を調査しミズアオイ再生の支援活動を続ける。

震災以前からからミズアオイのビオトープ作りなど、熱心に保護活動を続けてきた釜石市の加藤直子さん(ビオトープアドバイザー)とそのグループが、大震災で消滅したミズアオイビオトープ跡地から種子を掘り出して再生させ、継続した保護活動を行っていることは、極めて評価できるものである。

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レガシーとしての貴重なミズアオイ

ビオトープ協会では、震災後に各地で復活してきたミズアオイについての調査報告がなされていて、岩手県立大学平塚明教授の研究から、震災後に再生したミズアオイの中で、農薬が使われる以前の農薬耐性の全くない感受性個体の再生が認められた。

しかし、陸前高田市のように復興工事の中、嵩上げ工事で消滅した地域や、農薬耐性のある個体との交配によって感受性が失われることなどにより壊滅されている。

このため、感受性ミズアオイは、他の水系からも隔離されている旧大槌駅前の湧水・自噴井に出現したものが唯一となった。3・11三陸大津波で消失した中心街と、失われた多くの命を、末代まで忘れる事のないレガシーとして、大槌町のこの地に感受性ミズアオイを残すことは、地元住民の期待もあり極めて重要な取組となる。

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ドローンによる生育環境の空撮調査

ビオトープ協会と地元の三陸自然学校大槌(臼澤良一代表)の共催での空撮調査は、E社所有のドローン(Phantom 3 )を搬入して、旧大槌駅前の復興工事中で立入が禁止されているエリアに、主催関係者・県自然保護課(沿岸広域振興局)・工事関係者などの立会いの下にミズアオイ再生地を囲む約1,000m×300mにわたり、5m~100mの高度で空撮を行った。

この模様は、岩手放送TV・いわてめんこいTV・朝日新聞社・読売新聞社・岩手日報社などマスコミも高い関心をもって、「植物版震災遺構」などと一両日の間に一斉に報じられた。

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今後の取組み

市街地が造成される以前、この地域一帯は、豊富な湧水と自噴井により湿地帯と水田が広がっていた。高度成長時代に埋め立てられて町役場や市街地が形成されて町の中心地となった。

巨大大津波は、この市街地をえぐり、地中深くに眠っていたミズアオイ種子は、湧水によって海水が薄められ発芽したもの。農薬耐性ミズアオイとの交雑が無い条件として、他の河川などの水系とは隔離されていることが必要である。この要件を満たす湧水の保全と感受性ミズアオイ生態園作りが求められる。

平野公三町長は「大槌は湧水やミズアオイ・イトヨなど貴重な自然に恵まれている。復興まちづくりに郷土の財産をいかに位置付けるかが重要だ。しっかりと後世に残し、生かす方策を探りたい」と話されている。

現在進行している防潮堤工事が完了して海岸防災林植栽が行われるが、この湿原生態園との融合で、一層多自然で豊かな大槌の環境を創出することが重要である。

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野澤日出夫さん 認定NPO法人環境パートナーシップいわて代表理事、NPO法人日本ビオトープ協会副会長(主席ビオトープアドバイザー)