第13回

野澤日出夫さん(岩手県盛岡市)/認定NPO法人環境パートナーシップいわて代表理事、NPO法人日本ビオトープ協会副会長(主席ビオトープアドバイザー)

今回は、海岸林サポート委員である環境パートナーシップいわて野澤代表が、岩手の海岸部を巡って、最近の状況について報告をしてもらいました。

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岩手の海岸部の今を~現地リポート

海岸防災林・・東北における公共事業としての海岸防災林の起こりは、1500年代に仙台藩伊達政宗公が、仙台湾南部砂丘の飛砂・高潮などによる内陸開拓地への災害を防ぐために、クロマツ苗育成から着手して植林したのが始まりと思われる。

その後、幾度かの大津波によって破壊された海岸林は、その都度地域住民などの努力によって再生されてきた。また、近年は防潮堤も整備されてきた。

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しかしながら、3・11東日本大震災・巨大津波によって、再び海岸防災林の多くは、津波に耐えながらも失われてしまった。このたび被災地の一部ではあるが、三陸沿岸の、陸前高田市・大船渡市(三陸町)・釜石市(両石・鵜住居根浜・白浜)・大槌町(赤浜・吉里吉里・浪板)・山田町まで、3日間にわたり車で移動しながら、夫々のキーマンのヒアリングを行った。

歴史的に見てもクロマツによる海岸防災林再生が、いかに重要であるかを認識していたが、ここに住み続ける人々の生活を護るため、物理的にも精神的にも欠かす事の出来ない海岸林であることは、疑う余地もないことを改めて知る旅となった。

陸前高田市

宮城県に接する「奇跡の一本松」で知られる陸前高田は、広大な扇状地に市街地が形成された。気仙川を7kmも遡上した大津波によって、壊滅状態となった。白砂青松で有名な高田松原も壊滅してわずかに立木が数本残っていたが、倒れた松を見ると、その状況観察から、根元でへし折れた樹木が多くあり、かなりの抵抗をしていたものと思われる。その多くは引き波と一緒に流れて来た瓦礫が立木に引っ掛かったことなどにより過大な圧力が発生して折れた。また、地下水位の高い場所の樹木は根が浅く根こそぎ持っていかれたものも多く見られた。

進められてきた市街地の嵩上げ工事も、市街地南側の山を掘削して約80万㎥の土石が巨大コンベアーによって市街地造成地に運ばれ、現在ほぼその全容がわかる状態まで工事が進捗している。

元の高田松原跡地は、海側・陸側に防潮堤工事が進められており、その完成に松林再生となるが、地盤沈下も大きいためマツの根張りに必要な土盛りは必須である。ここでは来年春に向けて、地元NPOなどによる植樹の動きが進められている。一方で、市の北部広田半島は低地を津波が襲い、水道が破壊されて孤立した。現在復旧しているが、いまだに水質が悪く水供給ボランティアが活躍している現状である。

大船渡市

国道45号線を境に海辺側は、ほぼ全域津波で破壊された。ここには岩手県内で唯一最大の太平洋セメント(株)大船渡工場があった。この工場は岸壁に隣接していたため津波の直撃を受けた。工場は高温設備を利用して廃棄物年間40万トンの処理を行っていたが、被災後ただちに修復工事を行い、震災瓦礫の焼却処理に貢献した。

大船渡湾は、湾口が狭く奥行きの長い湾を形成して盛川が流入していて、カキやホタテなど養殖が盛んであるが、港の施設はほぼ壊滅して平地部の住宅・商用地は被害を受けた。復興住宅は高台に作られ移転が進んでいる。湾内はほぼ港湾施設で占められ、海岸林はほとんど形成されていない。

釜石市中心地

市街の中心地は釜石港湾施設で、河岸林はほとんど形成されていなかった。湾口に大型な防波堤がつくられ、市街地には6mの直立した塀のような防潮堤工事が進められている。市街地は、壊滅されず残った建物も多く、現状位置で修復されることにより街並みが戻りつつある。

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釜石市鵜住居根浜

箱崎半島の起始部付近にある箱崎町根浜海岸の土手に植栽されていた海岸防災林のうち、低くなっている箇所は大きな被害を受けたが、小高くなっている箇所は、一部は折損したが林の状態を保っている。海岸部は沈下して砂浜はほぼ消失した。防潮堤は被災前の高さに復旧を終え、来年度の海岸防災林植栽計画が進められる。この一部を住民の手で植栽し将来にわたり住民の海岸防災林として自ら管理する仕組み作りの取組を進めている。

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釜石市鵜住居白浜

根浜からさらに箱崎半島を進むとその中央部に、白浜漁港を中心にコミュニテイー集落が形成されている。震災時は完全に孤立し、トモダチ作戦によって全員一時救出されている。

住居地域は海岸近くから引いて、全てが高台の復興住宅や新築自宅への転居がほぼ完了した。

白浜漁港は、北向きに開き、箱崎半島北岸を漁場としていて、漁港を取り巻くように海岸防災林があったが、被災と防潮堤工事の過程で失われた。

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工事終了頃このエリアに海岸防災林が欲しいとの希望が地元から示された。この地区は、海の神様に対する信仰心が厚くて、神社を高潮などから護る林も必須と感じられた。

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大槌町小鎚

古来伝承されてきた「臼澤鹿踊り伝承館」-震災による疲弊した心の復興にとって、伝承されてきた鹿踊りが大きな役割を果たした。このような時こそ大切な存在であることを改めて認識した。この踊りで欠かす事の出来ない「ドロノキのカンナガラ」のためのドロノキの森づくりに地域住民やボランテイアと共に取組んでいる。これと併せて海岸防災林の再生についても説明し協力をお願いした。

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