NPOレポート | 投稿日: 2016.03.22

NPO活動レポート 第4回 NPO法人「森林との共生を考える会」

森林の整備から国産材の利用促進までの幅広い活動を展開

特定非営利活動法人「森林との共生を考える会」は、2001年に森林の保護を考えている一般消費者、林業家、木材業者、建築・設計業者等が手をつなぎ、健全な森林の育成、森林文化の復権、国産材の利用促進をすることを目的に、「森林との共生考える会inみやぎ」として設立されました。そして、5年間の活動を経て、さらに社会的信用を高め、責任ある団体として発展するために法人化することになり、2006年5月、「特定非営利活動法人森林との共生を考える会」として認証されました。
会の主な活動は、◇森林作業の体験:植樹、下草刈り、枝打ち、間伐、◇森を知る・学ぶ:森林の多様性や森の恵みを学ぶ、◇木の住まいの勉強会:木の特性や木の暮らしの勉強、◇災害跡地での植林:栗駒地区、仙台市荒浜、南相馬市などです。

金華山の森林を鹿の食害から守る活動

理事長の半澤力さんに、金華山や災害跡地の植樹ついて、お話をお聞きしました。
金華山は、宮城県の東部、太平洋に長く突きでた牡鹿半島の沖合700mに位置する周囲26kmの島で、神社の敷地を除く約95パーセントは国有林です。黄金山神社は、恐山、出羽三山と並ぶ東北三大霊場の一つで、島で生活しているのは、神社で働いている人だけです。島には希少な太平洋型ブナやモミの森林群落があり、シカ(約500頭)やサル(約250頭)等の野生生物が共存する貴重な生態系を有しています。島の生態系の根幹をなす森林は、増えすぎたシカの食害によって、稚樹が育たず天然更新が遅れ、環境の悪化が進行しています。また、島のマツは、1980年代頃から、松くい虫による被害が目立ち始め、島の南部では壊滅的な状態になっていました。その中で、島の緑の再生に取り組んでいた宮城北部森林管理署の取り組みに共感し、会としてボランティアを募り植樹活動に協力しました。同時に金華山のシカの食餌の被害調査と防鹿柵の有効性なども調査研究を行いました。
金華山での植樹作業はシカの食害から苗を守るために防鹿柵内に行いました。初年度は広葉樹約2000本を植えましたがすべて枯死したので、それ以降はクロマツ(一部抵抗性クロマツ)を植樹しました。仙台から金華山の植樹地までの道のりは遠く、金華山に渡ってから徒歩で往復3時間以上かかります。海が荒れると船は欠航になり植樹作業は延期になります。活動を継続する中で地元の人々の協働関係が構築され5年間の活動を区切りに、その後の植樹は地元の人達に引継ました。

岩手・宮城内陸地震被害地への地元の山取苗や種子による植栽

2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震で大きな被害を受けた栗駒山麓耕英地区の崩落跡地の植生回復に取組む事業を2010年5月から、開始しました。岩手・宮城内陸地震は、岩手県内陸南部を震源とした大地震で、宮城県側の栗駒山麓耕英地区にある駒の湯上流、冷沢地区、荒砥沢ダム上流において斜面崩壊などが発生しました。また、紅葉の時期に栗駒山登山で賑わう県道築館栗駒公園線も土砂崩れのため、各地で寸断されました。
栗駒一帯の植生を乱さないために環境調査会社の指導を受けながら、被害地域の植生を回復させるために植樹予定地周辺の樹種の調査と10月に植樹するための広葉樹の稚樹の採取を行いました。6月には、翌年植樹する広葉樹(ブナ、ミズナラ、カエデ類、ヤマハンノキ等)の稚樹を掘り取り、苗畑に移植しました。植樹する広葉樹の苗は、毎年地元の稚樹や種子を採取し、耕英地区の農家の畑を借り、自分達で育てました。

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10月には、宮城北部森林管理署と共催でボランティアを募り、栗原市耕英地区の国有林で第1回「栗原市復興ふるさと植樹活動」を行いました。栗原市長を始め、100名の参加を得て、広葉樹を植えました。「栗原市復興ふるさと植樹活動」は、宮城北部森林管理署と共催で2015年まで毎年行いました。植樹後は、参加者に森林の豊かさを学んでいただくために自然観察会を行いました。耕英地区国有林の植樹は、2015年で終了し、現在次の場所を検討しています。

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海岸林再生に向けての津浪被害地の植生調査を進める

海岸林再生についてお聞きしました。宮城県の海岸林1460haは、2011年3月11日の東日本大震災の津波により、壊滅的な被害を蒙り、約1000haが植栽による復旧が必要と見込まれました。会では、海岸林は、沿岸地域の人々の生活と農業等の産業を守る大きな役割を果たしてきており、地域の復興の為に海岸林を早期に再生させることが主要な課題であると捉え、海岸林の再生に取組むことにしました。2011年秋から3年間、民間企業の公募型助成を受け、津波で被害のあった県内の沿岸地域で、津波に耐えて生き残った樹種を調査し、再生に向け植栽すべき樹種の選定や造成手法の検討を行いました。調査は、東松島市、七ヶ浜町、亘理町の3地区の海岸林が残存した場所で実施しました。調査の結果、残存本数の多かった樹種や高木性の樹種15種を候補とし、これらの樹種の中から、海岸林再生に必要な要件(1.津波後の生存率が高く、潮風に耐性があること、2.痩せ地、乾燥に強く、砂の多い海岸土壌に適していること、3.郷土樹種であること、4.種子の確保や育苗が容易であること)を満たした樹種は、クロマツ、ヤマザクラ、コナラ、ケヤキで、この4種を海岸に植栽する樹種と判定しました。また、海岸林とその周辺から採取した7樹種について、苗木づくりのための播種・生育試験を会員が所有する白石市の畑を借りて行った結果、コナラ、ヤマザクラ、ケヤキは発芽率が高く、育苗が容易でした。2014年春に、育てた苗を県内沿岸部に植える予定で、国や県の関係機関と協議しましたが、会独自の事業としては、植える場所が見つかりませんでした。

国有林と協定を締結して海岸林植栽を実施

会では、民間企業の公募型助成の事業と並行して、林野庁が実施している海岸防災林再生のための「みどりきずな再生プロジェクト」に応募し、仙台森林管理署と契約を締結して、仙台市荒浜の国有林で植樹することにしました。このプロジェクトは、海岸防災林再生のため、盛土した生育基盤を造成し、工事が完了した個所において、民間団体と国が協定を締結して、一定期間、植栽から保育まで行う活動です。荒浜国有林に植樹する団体は当会を含め14団体です。会の植樹面積は0.13haで、植樹前日の準備作業は、植樹のための600本のマーキング、バーク堆肥や肥料の配置等大変な作業でした。

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植樹は2013年5月11日に行いました。抵抗性クロマツ350本とアカマツ250本(植樹まで登米市で仮植)を、専門家の指導の下に、会員と公募のボランティアの約100名で、丁寧に2時間かけて植えました。

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植栽後も生育調査など行い、補植などきめ細かいフォロー

植樹の仕方や施肥量と生育の関係を調べるため、施肥量を変えた試験も行い、防風柵も試験的に設置してみました。8月と11月に生育調査を実施した結果、クロマツ6本とアカマツ64本が枯死していました。アカマツが枯死した原因は、苗木の根系の発達が乏しかった、仮植中の低温・寒風害により苗木が衰弱した、暖地で生産された苗木のため、耐寒性が弱かったこと等が推察されました。
2014年5月に、アカマツ60本及びクロマツ2本の補植とヤマザクラ10本、広葉樹(コナラ、ケヤキ、ヤマハンノキ)数本を植え、7月には保育を行いました。2015年5月は、枯死したアカマツを植替え、9月には草刈りなどの作業を行いました。会では、植樹したマツが赤褐色に変色しても、1年間はその状態を観察し、再生が困難と判断した段階で植替えることにしています。施肥量と生育の関係を見た試験では、肥料が多い程良好な生育を示しました。仙台森林管理署との契約は、2016年3月末で終了しますが、さらに5年間契約を更新して保育に当たります。
半澤理事長は、「会員の高齢化と活動資金の調達が大きな問題ですが、地元との交流・貢献を大切にしながら、これからも災害跡地の植生回復や海岸林再生等に積極的に取組んでいきます」と話していました。

半澤 力さん
特定非営利活動法人森林との共生を考える会理事長。弁護士。仙台市在住。