NPOレポート | 投稿日: 2016.03.07

NPO活動レポート 第3回 NPO法人「生命と環境保全」

「生命と環境保全」設立に至る道のり

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白石市に活動拠点を置くNPO法人「生命と環境保全」理事長の伊勢脩さんに、NPO法人設立までの経緯や活動の概要をお聞きしました。

伊勢さんは、林野庁を退官後、宮城県の林業関係団体に勤務され、その団体が蔵王町にある県の施設を管理していたことから、その施設の所長を9年間勤めました。

県の仕事を辞してから、林野庁勤務時に、南米で植林を指導したこともあり、海外林業のコンサルタントとして中国の黄土高原で植林の技術指導や、国際環境NGO団体の現地ボランティアとして植林や苗木生産の技術指導に携わってきました。その後、北京大学の先生から中国で環境教育の指導をして欲しいとの要請があったので、2013年にNPO法人「生命と環境保全」を設立し、その代表として中国に渡りました。

NPO法人「生命と環境保全」は、伊勢さんの今までの活動を踏まえ、地球が抱える温暖化・省エネルギー問題に対して、国内外において環境や健康に対する意識を高め、将来にわたり環境を守ってゆくことの大切さを知り、行動する人材の育成に寄与することを目的に設立されました。活動範囲は国内だけでなく、国際協力活動も行います。設立目的を達成するための主な活動は、次の通りです。
(1)環境保全に関する人材育成
(2)地球環境に関する調査研究
(3)環境保全に取り組む人々との交流
(4)地球環境に関する情報発信

中国には2週間程滞在し、遼寧省の小学校の教員や子供達に環境教育を行いました。特に、大気や水質の保全の大切さ、湿原の保全等を日本で準備した教材を使って指導しました。環境教育のプログラムと教材作りの準備には2ヶ月かかりました。

環境教育を通じて子どもたちが自発的に気づくことが大切であることを実感

帰国後は、地元の白石市(3校)やその北側に隣接する蔵王町(2校)の小学校で自然の仕組みや自然観察等の環境教育を行っています。こうした経験を通じて伊勢さんは「環境教育では、子供達が自然の仕組みや大切さに気付くことが大切、気付きが無ければ、その先には進みません。どうしたら気付かせることができるかが悩みです」と気付きの大切さを強調されていました。また、市民講座の講師も務めています。

城下町 白石市の紹介

活動拠点がある白石市は、宮城県の南端にある市で、東京から東北新幹線で約2時間の宮城蔵王の玄関口です。市内には小原温泉、鎌先温泉があり、名所・旧跡も多く点在しています。街中には、掘割・水路があり、商家の蔵が点在するなど城下町の風情と趣があります。1995年には白石城が城下町のシンボルとして復元されています。白石城は仙台藩の支城で、1602年、仙台藩祖伊達正宗公の重臣として仕えた片倉影綱(通称小十郎)が城主となり、明治まで片倉家の居城でした。影綱は、天下人豊臣秀吉と徳川家康に一目置かれた智将でした。江戸時代は原則一国一城制でしたが、例外として、仙台藩には、仙台城(青葉城)と白石城(益岡城)の二つの城がありましたが、白石城は、明治初頭の廃城令により廃城処分とされ、ほとんどの建物は破却されました。歴史好きの方は、是非一度白石市を訪ね、名物の白石温麺(うーめん)*1を食べながら片倉影綱が活躍した戦国時代に思いを馳せていただきたいと思います。

海岸林再生に参加を決めた背景

伊勢さんは、小学校で環境教育に尽力する一方で、林業技術者としての集大成に何をするか考えた末に、震災で大きな被害に遭った海岸林の再生に取組むことにしました。この決断の背景として「設立目的の環境保全にも合致しているし、海岸に木を植えれば、孫からおじいちゃんが植えた木だと言って貰えるのではないか」と仰っていました。生命と環境保全では、白石市内の畑を借りてビニールトンネルで植樹のための苗木を自分達で育てています。また、伊勢さんの自宅の庭でも数種類の苗木をポットで育てています。海岸林再生の植樹地は、宮城県が「みやぎ海岸林再生みんなの森林(もり)づくり活動*2」で公募していた中から山元町にしました。山元町は約1.6haが公募され、生命と環境保全では、そのうち0.1haの個所で県と協定を締結しました。

創意工夫と苦労をしながら植栽へと

公募地は、国が盛土して植生基盤を造成したものですが、植樹地の土質があまり良くなく、雨水が溜まることが分かったので、白石市の業者に依頼して油圧ショベルで植樹場所に穴を掘って牛糞堆肥を入れ土壌の改善をしました。これに先立ち、伊勢さんと奥様の二人で、白石の自宅から通って2日がかりで、油圧ショベルで穴を掘る個所500ヵ所に石灰で印を付ける作業をしたとのことでした。牛糞堆肥は角田市の業者に現地まで運搬してもらい、手作業で植樹穴全てに5トンの堆肥を投入しました。雨が降ると水が溜まるので、牛糞堆肥を投入した後、少し盛り上げた植樹マウンドを準備するのに、3~4人で数日間かかりました。

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こうした事前準備に時間と労力が掛かりましたが、2015年4月25日に漸く植樹に日を迎えることができした。白石市からの10名と伊勢さんとお付き合いがある国際環境NGO団体の10名の参加の下、植樹指導をしながら、県種苗組合から購入した抵抗性クロマツ(コンテナ苗)と愛知県から寄贈されたコナラをそれぞれ250本植えました。植樹に先立ち、鎮魂と作業の安全を祈願するため、近くのお寺の住職に読経をしてもらいました。伊勢さんは「読経が終った時に、ようやくここまで来たとの思いから、目頭が熱くなりました」とのことでした。

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植栽は森林づくりのスタートとの想いで

植樹後は除草などの管理をしていますが、雨で植樹マウンドが崩れる事が想定されるので、フェルトでマウンドを覆うことを計画しています。

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伊勢さんは、今年も山元町で植樹することを計画しており、県に植樹面積の追加を申請しています。「地拵えや苗木調達のための資金や人手に課題があります」と仰っていましたが、他団体や国土緑化推進機構からの支援もお願いしているとのことでした。樹種は、クロマツと落葉広葉樹(コナラ、クリ、ヤマザクラ等)で、4月末頃植樹する予定です。

伊勢さんは、林業技術者としての集大成の想いを込めて、海岸林再生に取組んでおられます。森づくりは植えて終わりではなくスタートです。特に植樹後の数年間は保育が大変でありまた重要です。伊勢さんの熱意は立派な海岸林となって結実することと思います。

*1 白石温麺(うーめん):そうめんの一種で、白石市で生産される同地の特産品です。一般のそうめんは、生地を延ばす際、表面の乾燥を防ぐために油を塗りますが、温麺は油を用いないのが特徴です。長さ10cm程度の短い束にして売られています。

*2 宮城県では、津波により被災した海岸防災林の再生について、民間団体や企業の参加・協働を推進するため、平成26年1月に、「みやぎ海岸林再生みんなの森林(もり)づくり活動」実施要領を制定し、森林(もり)づくり活動を行ってくれる団体を募集しています。この活動は、県と活動を希望する民間団体等との間で協定を締結した上で、海岸防災林の再生に必要な森林(もり)づくり活動を一定期間、継続的に行っていくものです。

伊勢脩さん
昭和17年、大崎市(旧田尻町)生まれ。
NPO法人「生命と環境保全」理事長、林業技師、環境省:環境カウンセラー、経済産業省:省エネルギー普及指導員、ネイチャーゲーム中級指導員。白石市在住。