レポート | 投稿日: 2015.09.25

視察報告:吹きすさぶ北西風から庄内平野を包み込み守る“海岸林”と、これを守る地元のヤングオールドパワー

3. 酒田市内の海岸林をフィールドにして活動する「万里の松原に親しむ会」との交流会

今年3月15日に仙台市で開催した国連防災世界会議関連シンポジウムにて「万里の松原に親しむ会」の三沢英一会長による活動の報告を聞き、とてもいきいきと活動を展開していることが感じられました。現地で直接会員の皆様方と交流し、組織の活性化の秘訣を探してみたいとの思いで伺いました。

テニスコートや球技場が一体となった酒田市光ヶ丘公園に隣接して「万里の松原に親しむ会」の活動エリアがありました。園地内はマツ林の中に炊事場や自然観察林、つつじコースなどの遊歩道といった多様なゾーンが整備されていました。

視察バスは活動拠点の交流施設「フォレスト・パル」に午前9時頃に到着しましたが、既に多くの会員の皆様が集合されていました。

視察者一行を出迎えてくれた「万里の松原に親しむ会」会員の皆様。赤帽が会員の目印

園地視察では、時折強くなる雨の中、三沢会長や会員の皆様に同行し説明を聞き、また、個々の視察者の質問にも懇切丁寧に対応していただきました。

雨が降る中、万里の松原での活動状況を説明される三沢会長。海岸から約1km離れているが、木々が風によって傾いていた

万里の松原の中を遊歩道に沿って歩きましたが、手入れが行きわたった森林の開放感があり、蛇などの気配もなく、安心して森に触れ合えるよう環境整備されていました。林内は、クロマツが上層木を形成していましたが、コナラ、ツツジ、ドウダンツツジなどが彩を添えていました。

「万里の松原に親しむ会」が国有林と協定を締結の上、仙台市荒浜地区の海岸に2013年4月にクロマツ、オオヤマザクラを植栽しましたが、同年に同じ樹種を万里の松原エリア内に兄妹林と名付けて植樹し、看板も設置されたそうです。実際に荒浜で植樹、下刈り等の活動に参加できない会員の想いを繋ぐものであるとのことでした。

万里の森兄妹林(左)と仙台市荒浜の“万里の森”(右)。万里の松原エリア内に同じ樹種を同じ時期に植え、荒浜海岸林に想いを馳せることができる

その後、万里の松原を散策しながら交流会場に到着して、一同介しての意見交換会が行われました。

これから意見交換会が始まるところ。会員は元学校の先生、森林管理署職員OB、現・元自治会長など多士済々である

視察側から事前に三沢会長にお願いしておいた質問内容を踏まえつつ、会長からの説明が行われ、その後に視察者と会員の闊達な発言が続きました。
組織の活性化の参考になると思われる事項を中心に、次のような意見をいただきました。

①平成13年「万里の松原に親しむ会」を設立して、過去に整備されたがその後の管理が不十分な状態にあった万里の松原において、植栽木の剪定、下刈りなどの作業をスタートした。作業後の森林が見違えるほど綺麗になったことに喜びを感じた。

②その翌年には、酒田市から平成15年に実施する市制70周年記念事業の事業提案を要請され、会員で検討を重ね、市に報告したところ、市当局から「万里の松原に親しむ会」が主催することも要請され、この流れで小・中学生参加の植樹会、自然観察会など実施した。これらの体験は、会員の自信と遣り甲斐を醸成した。現在、会員数は百名を超え、第一線を退いた人が、ほとんどである。

③会員間の情報の共有化と活動方針等への共通認識を持つこと。会報は会員や地域の関係者への情報発信の大切なツールである。

④これまでの活動を通じて、経験から「楽しく・生きがい・継続」を会得して、これを会のモットーにして活動している。

某会員に「生きがい」を感じるのはどのような時かと尋ねたら、「小学生向けの森林教室おいて、子供たちから『先生』と呼ばれること。これが快感になって、より先生に相応しくなるため、森林生態の勉学に励む」とおっしゃっていました。
確かに日常社会では学校の教師、国会議員、医師、弁護士など限られた職種の人しか「先生」と呼ばれないので、先生と呼ばれると喜びを感じることに大いに共感できました。

また70代後半の会員は、汗流して森林がきれいになるのは気持ちがよく、充実感が次の活動へのエネルギーへ繋がるとおっしゃっていました。

⑤会からの働きかけなどをした結果、地元の小学校2校は、毎年学校の授業の一環として弁当持参で森林学習を実施し、当会が支援する。また、地元の中・高校も活動に参加している。学校の活動は広報誌に掲載して、地元住民にも周知するよう配慮している。

とのことでした。
なお、学校との連携が図られている理由について、「戦後は海岸林も荒廃し、海岸線から1km以上離れた自分の家から海が見えた。燃料は海岸林の松を伐採して確保した。しかし、冬は砂が襲来して家に砂溜まりができた。大変な苦労した経験が地元住民にはある。したがって、海岸林を通じて環境教育をすることの重要性は、地元の学校関係者にも理解されやすい」とのことでした。また、「子どもたちとの交わりが楽しく、会の活力の源泉である」という意見もありました。
さらに、

⑥地元の自治会連合からも会に加入していただき協力を得、広報誌を回覧していただいている。会員も地元住民が多く、地域の団体として認めていただき連携している。

⑦東日本大震災直後に多くの女性会員から、自分たちが被災地に対して何か協力すべきではないか意見が出され、庄内森林管理署に相談し、結果として仙台市荒浜地区の公募に参加することに繋がった。遠隔地での活動は資金的に大変だが、この活動が、地元の自治会などにも共感と支援を呼び込み、当会の会員増加にもつながった面もある。また、地元小学校の松島修学旅行に際して、日程を1泊増やして荒浜海岸林の作業をしてくれた。多額の寄付も当会にしてくれた。

とのことでした。このように波及効果も大きいので、来年は協定の更新時期だが、更に継続して頑張るつもりでいるとおっしゃっていました。

意見交換会の様子。酒田市松陵学区コミュニティー防災センターにて

会の活動力については、

⑧活動の源は先を見て新たな活動を企画する。楽しいビアパーティ、芋煮会、新年会含め年間計画を作成し会員に周知すること。また、会員全体で意見を出し合い方針を決定することも重要。楽しく活動すれば、友は類を呼び楽しい仲間が集まる。

⑨多様な活動を実施するが、会員個々の得意分野を生かしつつ自己研鑽に励み、外部の講師や専門家だけに依存することなく、自己完結を旨とするように努めている。会員の技術知識のレベルアップを図るため、内部研修も実施する。

⑩これまでの活動を通じて、必要な業務ごとの分担を明らかにして、担当者が責任を持って対応する組織体制の構築に努めている。

との意見をいただきました。閉会予定時間を超えても意見交換の発言が途切れませんでした。

会員の皆様は表情が生き生きとし、心地よい汗を流して清々しい気持ちになるだけでなく、森が綺麗に整備された姿を見て充実感を覚え、子どもたち、市民が万里の松原に集う光景をみて社会貢献にも繋がっていることへの満足感が、この会の活力の根源にあると感じつつ交流会を終えました。

被災地は課題も多々あり、地域住民の生活も大変な状況にありますが、将来、海岸林が蘇り、このような活動が被災地でも広まることに少しでも貢献できればと思いつつ帰路につきました。

参考文献等:
「砂防林物語」須藤儀門 著
「万里の松原人」万里の松原に親しむ会 著
「わたしたちの庄内海岸林物語」、「庄内海岸の国有林」林野庁 東北森林管理局 庄内森林管理署 著