レポート | 投稿日: 2015.03.23

2月21日(土) 岩手県大槌町で「みんなで考えよう 岩手の海岸・緑の再生シンポジウム ~海岸防災林の再生を考える~」を開催しました。

開催の経緯

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リアス式海岸の岩手県の沿岸部は、平地が少ない中で、住宅用地のかさ上げ、防潮堤、道路などの工事が進行し、将来の街づくりが進められている中にあって、地元の方々も日々不自由な生活を強いられています。

こうした中で、国土緑化推進機構としては、地元の方々は海岸林にまで目を向ける余裕がないのではとの思いもありましたが、NPO法人環境パートナーシップいわて、NPO法人遠野まごころネットと相談したところ、東日本大震災から4年近くが過ぎ、海岸林に関心をもってもらう機会を設定することは、意味あるとの結論に至りました。

ここに3者が協力して、2月21日に大槌町にてシンポシウムを開催しました。

NPOの方から、地元の声を聞いてもらいたいので関東圏の関心ある組織等の参加も期待され、当機構からお願いしたところ2団体が、シンポジウムの開催地の大槌町まで来てくださいました。

午前中はエクスカーション(現地視察)

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県外から来た参加者を中心に、地元・NPO法人遠野まごころネットの臼澤良一さん、根浜宝来館の女将・岩崎昭子さんなどにご案内いただき、根浜海岸で生き残った防災林と防潮堤等の復旧工事の状況や海岸防災林の復活に向けた願いが語られました。また、宿泊施設の裏山にあって震災時に使われた避難路を車いすも通行できるように整備している状況を見学しました。

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現地視察の最後に、県が海岸防災林・防潮堤工事をしている浪板海岸林で、県の担当者から海岸防災林工事・植栽試験等の状況の説明がなされました。

この現地視察を通じて、平地の少ない箇所での多種の工事が同時進行している厳しさなど痛感しました。

シンポジウム

大槌町の「三陸花ホテルはまぎく」で開催しました。地元住民、NPO、地元市町村及び岩手県職員、県外の一般皆さんなど70名が参加しました。当機構の梶谷専務理事の開会挨拶後、講演が行われました。

基調講演

「東北の海岸林再生と豊かに生きるための生物多様性復元」
(横浜国立大学 学長 鈴木邦雄 氏)

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横浜国立大学学長・鈴木邦雄先生は生態学者です。かつては自然と言えば、原生的自然が価値あるものとのされていましたが、人工的に造成されたクロマツなどの海岸林は、時間の経過とともに落葉樹含め豊かな植生と動物が生育することによって、里山的な身近な自然としてその存在の価値を増すこと、また、先人がマツを植えてきたのは、飛砂などから生活を守るための森林造成に当たり必要でかつ適切であったこと、さらに、先人が苦労して造成したマツ林などの再生は簡単なものではないことを、事例を交えて説明されました。

特に印象に残ったのは、「ベトナム戦争時、枯れ葉作戦でマングローブが壊滅的な被害を受けた地域で、土地の流失や魚介類の喪失は、地域住民にとって死活問題だった。このため地元住民は、戦時下でも種子を育て再生に励み、見事に復元し今は観光も盛んになったが、これは消失したマングローブを放置せずに即座に再生の努力をした結果、緑と自然豊かな地域が復活し、地域の振興にもつながった」との紹介がありました。海岸林再生に当たり示唆に富む紹介であった感じました。

基調報告

「海岸林の様々なはたらき」
(独立行政法人 森林総合研究所 東北支所 坂本知己氏)

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森林総合研究所東北支所・坂本先生からは、全国の様々な海岸林のスライド写真をもって、その海岸防災林の有する飛砂防備などの種々の機能について具体に説明がなされました。海岸林内にあるゴルフ場や研究施設が、周囲を囲む海岸林の存在が重要である場合に、高いレベルで維持管理されているケースが多いとの説明がありましたが、一般の海岸林の場合も維持管理していく上で、地元住民に大切にされ、関心をもってもらうことが、重要であると感じました。

宮城県事例報告

「地域の人たちと手をたずさえ『名取市民の森』の再生を目指して」
(公益財団法人オイスカ 海岸林再生プロジェクト担当 吉田俊通氏)

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宮城県名取市において活動している公益財団法人オイスカの吉田さんからは、海岸防災林の再生活動の経過説明がありました。地元の意向と行政との連携を重視しつつ、迅速にスピード感をもって対応してきたこと、そして地元住民が主役であることを手短に説明されました。

関東圏から参加者紹介

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関東から遠路はるばるお越しくださった日本森林林業振興会副会長・萩原宏さんからは、振興会による国内外での植林活動状況や、岩手の海岸防災林の支援への関心が述べられました。

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続いて生活協同組合コープみらい政策推進部長・田川尚さんからは、田川さん本人も震災後2週間経過した頃に大槌町に支援にきたこと、これまで5億6千万円の募金を集め支援に活用してきたことなどが報告されたとともに、皆様の意向を聞いて今後の協力について参考にしたい旨の挨拶がなされました。

パネル・ディスカッション

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NPO法人環境パートナーシップいわて佐々木副代表理事をコーディネーターに迎え、「豊かな環境を次世代のために…」をテーマに進められました。パネラーは地元の次の方々でした。

  • 東梅英夫氏(東梅英夫氏踊保存会 会長)
  • 岩崎昭子氏(宝来館 女将)
  • 阿部 力氏(新おおつち漁業協同組合 代表理事 組合長)
  • 手塚さや香氏(釜石地方森林組合 釜援隊)
  • 芳賀正彦氏(特定非営利活動法人吉里吉里国 理事長)

東梅英夫さんからは、「臼澤鹿子踊に使うドロノキの植樹を始めて、子どもや支援者などの輪がひろがり、長い年月をかけて成長するドロノキに思いを託している。」

岩崎昭子さんからは、「旅館の前の80年生のマツ林が津波に耐えてくれ、これが旅館を守ってくれたとの思いがある。防潮堤の工事が終われば、地域の者で失われた海岸林を少しずつ植栽していきたい。また、平地部が少ない根浜海岸では、海岸林と周囲の里山の林は一体として海岸林的な役割があると感じている。」

阿部力さんからは、「漁場を守ることが担い手の育成に繋がり、そのためには、広葉樹などの森林から流れる腐葉土が重要と考えている。こうしたことからも植樹祭が再開されることを期待している。」

手塚さや香さんからは、「以前に新聞記者として岩手に配属になり縁があった。昨年新聞社を退職して釜石で企業など含めボランティアの受け入れ・森林などの作業への配置調整などをしている。山は継続持続して育てることが大切なので、担い手育成の林業スクールも始めた。」

芳賀正彦さんからは、「津波の被災後に、周囲の森は何もなかったかのように残っていた。助かった命は山のために生かそうと考えた。NPOの仲間は漁師が多く、林業の素人であったが、4年が過ぎ、プロ集団としての意識をもって間伐販売などして糧を得ている。今後は植林をし、後世に残すこともしていくつもりである。また子ども向けの森林教室も始め、人材育成の第一歩を始めている。」

など、パネラーそれぞれが、震災後の地域を思い、その新たな復興に向けて苦労しつつも前に進んでいる発言には、感激するものがありました。

関連イベント

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会場では、地元・臼澤鹿子踊保存会の皆さんのご厚意で、臼澤鹿子踊「大槌の伝承」が披露されました。

また、プレイベントとして2月15日(日)からの3日間、JR盛岡駅にてパネル展と参加型イベント「みんなでつくろう 海岸防災林」を開催しました。

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東日本大震災で被災した海岸防災林が、行政や企業・NPO等の民間団体の力で、少しずつ再生している様子をパネル展示したほか、樹木のカードを貼って海岸林を完成させていくメッセージボードには、皆さんの想いが書かれたカードが貼られ、海岸林がつくられました。