苗木を育てる

苗木

(1)十分ではない苗木の供給体制

海岸防災林における植栽本数は、5,000本〜10,000本/haが標準とされています。全国のマツ類の苗木年間生産量は、現状では庭木等クロマツで90万本、アカマツで70万本ですが、最大生産可能量はクロマツで400万本、アカマツで720万本程度と試算されています。

しかし、岩手、宮城、福島の3県での広葉樹の苗木生産量は庭木等を含め約70万本と少ない状況です。さらに、沿岸部においては被災した苗木の育苗業者も相当数あり、海岸林再生に必要な苗木の供給体制は十分な状況ではありません。被災した海岸防災林を再生するには、今後、苗木が足りなくなる可能性が大きいと言われています。

(2)東北の木々から採れた種を育て、東北に帰す

被災した海岸防災林を再生するために、針葉樹ではクロマツ、アカマツ等、広葉樹ではカシワ、トベラ等の植栽が考えられていますが、種から育てた苗木が植栽できるまでに成長するには2〜3年を要します。また、広葉樹の苗木供給を検討する際は、苗木の需要量を把握したうえで、植栽予定地に従来自生する樹種であるとともに、できる限り植栽生育環境に近い地域で採取した種子から生産できるような体制を整えることが望ましいとされています。

こうしたことから、被災地周辺の樹木の種子から、被災地に植える苗木を育てる取り組みが全国で進んでいます。

※活動事例のご紹介

とうほくとっとり・森の里親プロジェクト
~東北で採取した種子を鳥取県で育て、里帰りさせる~

津波による被害を受けた東北の海岸林再生を支援しようと、鳥取県内の子どもたちが被災3県の木の種子を育て、被災地に返す「とうほくとっとり・森の里親プロジェクト」に取り組んでいます。岩手、宮城、福島3県の子どもたちや林業関係者らが採取したコナラ、クリ、ミズナラなどの約3000個の種を預かり、鳥取県内の19カ所の小学校や苗木生産者が育ててきました。

 植えた種に水やりをする鳥取県琴浦町立八橋小学校の児童たち
平成25年11月には元気に育った苗木を携えて鳥取県の児童が東北を訪れ、植樹祭を行いながら、被災地の児童と交流を深めました。岩手県陸前高田市の海に近い高台にある市有地で開かれた植樹祭には、同市立広田小学校の5、6年生と、鳥取県米子市立車尾(くずも)小学校の6年生4人が出席。震災直後から、手紙などを通じて交流している両校の児童が一緒に、コナラの苗木200本を植えました。

 海を見下ろす高台に、育てた苗木を植える車尾小の児童

車尾小6年の児童は「心を込めて育ててきた苗が、東北を守る防災林になってほしい。自分たちにできることから行動し、絆をつなげていきたい」と挨拶。広田小5年の児童は「震災後、全国の学校から応援してもらいましたが、実際に来てくれて交流できたのがうれしい。苗が大きく元気に育ってほしい」と感謝の気持ちを伝えていました。

同月には福島県、宮城県でも植樹祭が行われ、合わせて600本の苗木が東北への里帰りを果たしました。また、3県からは新たに約3000個の種子を譲り受けており、平成28年3月まで苗木の育成を続ける予定です。

鳥取県農林水産部全国植樹祭課は、「東北で植樹した子どもたちは、現地の様子に直接触れたことで、それまで漠然としていた苗木を育てる必要性を、本当の意味で理解できたようです。これからも東北を支援していきます」と話しています。


海岸松の子育て支援事業
~被災した海岸で奇跡的に生き残ったクロマツを育てる~

海岸松の子育て支援事業

東日本大震災の津波で海岸防災林は一定の減衰効果を果たし、背後地の農地や民家を守りましたが、松林そのものは壊滅的な被害を受けました。

しかしながら、仙台市宮城野区蒲生海岸の県有林で、倒木の合間にクロマツの稚樹が奇跡的に生存していることが確認されました。そこで、海岸林再生に必要な苗木の不足を補うために、宮城県、宮城県農林種苗農業協同組合、宮城県緑化推進委員会は共同で「海岸松の子育て支援事業」として、生き残ったクロマツの稚樹を苗木に育てる事業に着手しました。

事業では、稚樹の掘り取り、養苗に当たる人手を確保するために雇用創出基金を創出し、被災によって仕事を失った30人余の方々にも作業をお願いしました。2012年1月、寒風に吹かれながら20万本の稚樹の掘り取り作業を行うという、難事業でした。掘り取った稚樹は、蔵王町にある同組合の圃場に移し、大切に育てています。

「事業期間が決まっていたため、従来とは違う寒い時期での掘り取りになりましたが、作業に当たってくださった方は、弱っていた苗の根を傷めないよう、1本1本丁寧に扱ってくださいました。圃場にも足を運び、除草や消毒などの手入れをしながら、成長を喜んでくださいました」と、太田清蔵組合長は当時を振り返ります。 生育の過程で枯れたものもありますが、7〜8万本の苗が順調に育ち、青々とした葉を茂らせています。平成26年春から、生まれ育った海辺に植栽される予定です。救出作業に参加した被災者の方々も、そのゆくえを見守っています。


どんぐりプロジェクト「プロジェクトD」

どんぐりプロジェクト「プロジェクトD」
岩手・宮城・福島の3県で採取したどんぐりを、被災地を含めた全国で育て、育った苗木を津波で失われた海岸地域に植樹する活動を行っています。どんぐりの苗木(コナラ等)の育成を通じて被災地と全国の人の心をつなぎ、東日本大震災で被災した海岸林を再生することを目的としており、2011年度から年度ごとに、子供と一緒にどんぐりを育てる団体(学校、NPO、企業等)や家族、個人を募集しています。